【気管支喘息】麻酔科に大事な内科疾患 -3-

麻酔

麻酔科医にとって大事な内科的疾患の第3弾

気管支喘息について話していきたいと思います

定義

これが気管支喘息の定義となっています

ガイドラインは3年ごとに改訂されていますが、定義については少なくとも2015年から変更はありません

特徴は「変動性を持った」というところにあると思います

具体的に言えば、

夜間や早朝での増悪

感冒、天候変化、強い臭気で誘発される

といったある条件下で臨床症状が明らかになるということです

図で表すと上記となります

皆さんはこれからたくさんの喘息が既往にあるという患者に出会すと思います

でも喘息の既往を全て気管支喘息の既往と判断してはいけません

多くはいわゆる気管支喘息ではないのです

このとき定義を再度思い出していただき、できれば自分で診断してほしいと思います

難しければ専門家である呼吸器内科に相談しましょう

内科的管理目標

気管支喘息の管理目標は

1. 症状のコントロール

2. 将来のリスク管理

と記されています

もちろん、われわれ麻酔科医としては 1. を重要視します

では実際に「症状のコントロール」はどのように行っていけば良いのでしょう

ガイドラインでは

気道炎症を制御して、

正常な呼吸機能を保ち、

危険因子を回避、除去する

と述べられています

これでは抽象的すぎますよね

麻酔科外来で気管支喘息もつ患者の手術申込がありました

未治療もしくはコントロールが悪い場合はもちろん呼吸器内科にコンサルトしてください

一方で治療の介入が行われている場合は、われわれが手術OKと判断する必要があります

ここで

気道炎症の制御ができており、(感冒症状がなく禁煙ができており、)

正常な呼吸機能が保たれ、(PEF 80%以上かつ日内変動 10%未満であり、)

危険因子を回避、除去されている(薬物治療が十分できている)

となれば、概ね安全に周術期管理ができそうだなと思えるでしょう

内科的治療法

治療は1-4のステップに分けられています

長期管理薬としてはICS(吸入ステロイド薬)がベースとなります

ステップが上がるごとにICSが増量され、そこにLABA、LAMA、LTRAが併用されていきます

表をみてわかる通り、ステップ2で週1回以上の症状があることになります

手術申込が出た時点でステップ2以上であれば、迷わず呼吸器内科へコンサルトしておきましょう

また、この週1回の症状がどの程度のものなのか、ということも大事になります

上の表は発作持の対応についてですが、ここに発作強度の分類が示されています

大まかに言えば、

横になれる(SpO2 96%以上)は小発作

横になれない(SpO2 91%以上)は中発作

動けない(SpO2 90%以下)は大発作

呼吸減弱(SpO2 90%以下)は呼吸不全

となります

発作時の治療はSABA(短時間作用性吸入β2刺激薬)です

術中の発作時も同様で、麻酔科医にとってもお世話になるお薬ですね

術中の評価

では実際に周術期に喘息発作が出現するした場合、どのように評価して治療を行っていくかについてお話ししていきましょう

まずはモニターでカプノメータ波形の変化に気づくでしょう

麻酔器によってはフローボリュームのループでも確認できるでしょう

その後気道内圧が上昇してきて、SpO2が低下してきます

聴診をして呼気時の喘鳴(wheezes)を聴取しましょう

鑑別診断としては “DOPE” を否定することが大事になります

気管チューブの位置異常や折れ曲がり、麻酔器の不具合を否定します

聴診では左右差の有無から気胸も否定できると思います

術中の対応

気管支喘息の診断がついたら、直ちに治療を開始しましょう

手順は以下の通りです

個人的にはアミノフィリンは使用しません

厳密には血中濃度を測定して管理する必要がある治療薬だからです

麻酔中の比較的スピードを重視する必要がある対応であり、重要度が低いのかなと思っています

また、β2刺激薬の吸入法は少しコツが要ります

全身麻酔中は基本的には自発呼吸がありません

患者が勝手に吸入薬を吸ってくれることは絶対にあり得ません

当院ではレスピレーサー®︎というデバイスを使って吸入させます

一時的に手動換気に変換して、タイミングよく吸気時にプッシュするのです

気道狭窄が著明となり、バッグが全く揉めない激ヤバ症例ではエピネフリンは静注が良いでしょう

しかし、手動換気でなんとか揉める程度であれば皮下注がおすすめです

循環動態をひどく荒らさず、著効してくれます

いかがでしたでしょうか

リスク因子と題して、3回にわたり麻酔科医にとって重要な内科的疾患についてお送りしてきました

今後皆さんは幾度となくこれらの疾患に関わることになります

経験を重ね、ぜひマスターしていってください

おまけ

喘息と似ている病態にCOPDがあります

皆さんは自信をもって、違いを説明できますか

実はこの世の中には、喘息とCOPDを合わせもった疾患が存在します

やはり専門家をもってしても、本当に判断しにくい似た疾患なんですね

そりゃあ麻酔科医に区別しろと言われても難しい話です

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