皆さん、「アネレム®︎」使ってみましたか
麻酔科医にとって、麻酔分野の新薬登場は胸が躍ります
また新たな道具を手に入れて、仕事に向かうことができますからね
さて、今回はそのアネレム®︎を含む『ベンゾジアゼピン系』についてお話ししていきたいと思います
全身麻酔で使用する大事な薬剤、鎮静編、第2弾、です
ベンゾジアゼピン系の鎮静薬は全身麻酔のみならず、内視鏡などの検査中の鎮静としてもよく使用されます
そのため今後麻酔科医として、内科の先生にも度々相談されることがあるでしょう
ぜひ知識を身につけておきましょう
また、プロポフォールと比較されることが多い薬でもあります
実際にたくさん使用してみて、違いについても実感してほしいと思います
特徴
ベンゾジアゼピン系薬剤は4つの作用をもちます
催眠作用、抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用です
ということは、こちらもプロポフォールと同様に鎮痛作用はありません
これらの作用があると考えれば、区域麻酔や検査中の鎮静として使用するには良い適応に感じますね
ただし筋弛緩作用による呼吸管理には十分注意しましょう
それでは実際に麻酔科がよく使用する2つの薬を詳しくみてみましょう
ミダゾラム
検査中の鎮静で最も使われている薬剤です
周術期でも使用に適した場面はちょくちょくあります
新生児手術の維持、挿管のまま手術室退室する際の鎮静、重度の心疾患既往がある手術の導入..
このような場面で使用することにはもちろん理由があります
ミダゾラムの特徴についてみていきましょう
ミダゾラムは短時間作用性です
ただし、ご覧の通り持続時間は15-30分とお世辞にも短時間とは言い難いです
プロポフォールの持続時間は5-10分ですからね
これはあくまでもベンゾジアゼピン界では短時間だということです
高齢者や腎機能障害の患者はさらに持続時間が延びますので注意しましょう
そしてベンゾジアゼピン系薬剤には拮抗薬があります
これは他の鎮静薬にはない大きな強みです
術後に覚醒が不十分な時はもちろん、検査中に催眠作用や筋弛緩作用が強くなってしまった場合にも使用できます
ただし、注意点があります
それは『半減期』です
ミダゾラムの半減期とフルマゼニルの半減期には差があります
拮抗作用が消失し、再度ミダゾラムの効果が出現してしまう可能性があるのです
「手術室を退室して、病棟に戻ってから呼吸が停止してしまう」
そんな最悪なケースも考えられます
十分注意した上で使用しましょう
ざっくり言うと、ミダゾラム投与後1時間程度での拮抗は気をつけなければいけませんね
続いてCSHTについてです
プロポフォールはCSHTの延長がほとんどなく、長時間手術にも適しているという話をしました
ミダゾラムはどうでしょう
比較的延長しています
特に投与直後の傾きが急であることを考えると、手術中の持続投与には向いていませんね
ICUで長期人工呼吸管理が必要な患者への鎮静には良さそうです
ただし、蓄積性や耐性には注意が必要です
心抑制作用
これはベンゾジアゼピン系薬剤全てに言えることですが、心抑制作用が弱いという特徴があります
心機能低下のある患者等の導入薬にはプロポフォールより適していると思います
ただし導入後の循環動態に関しては、投与薬選択より投与量を注意する、が基本ですからね
血管痛がない
こちらは完全にライバルであるプロポフォールを意識した項目です
もちろん「ない」に越したことはありません
レミマゾラム
それでは新薬であるレミマゾラムをみていきましょう
麻酔(anesthesia)+レミマゾラム(remimazolam)= 『アネレム®︎』
そのまんま、です
ミダゾラムが短時間作用性でありましたが、レミマゾラムは超短時間作用性です
ミダゾラム同様、ベンゾジアゼピン界でいう『超短時間』です
消失半減期をみてみると、52分となっています
えっ?どこかでみたような..
そう、
フルマゼニルの半減期と一緒です
ミダゾラム以上にフルマゼニルとの相性が良さそうですね
CSHTについてみていきましょう
なんと、2時間投与で7分、7時間投与で7分
全く延長していません
ミダゾラムのCSHTは7時間投与で約2時間、プロポフォールでも7時間投与で約30分
圧勝です
長時間手術に適したお薬と言えるでしょう
ここでCSDTについてもみていきます
CSDTは『50%CSDH = CSHT』でしたよね
75%CSDTが7時間投与で31分だそうです
これは臨床で解釈すると、
意識回復の6倍の血中濃度のまま投与中止してしまうと、30分は起きない
と推測される、ということになります
やはり長時間手術に適した薬であることは間違いありませんが、維持濃度には気をつけなければなりませんね
新薬のレミマゾラム、BIS値は当てになるのでしょうか
血中濃度とBIS値はある程度相関しているようですね
よかったです
でもベンゾジアゼピン系薬剤はBIS値は高く出る傾向にあります
あくまでも術中は波形をみながら、です
新薬なので、用量もみていきましょう
添付文書には導入量は12 mg/kg/hrと記載されています
まず導入量の記載が持続表記ということに違和感がありますね
60秒かけてゆっくりと単回投与したとすると、
導入量は0.2 mg/kgとなります
これは皆さんが知っているミダゾラムの導入量と同じですね
わかりづらい表記でしたが、結局ミダゾラムと一緒ということを覚えておきましょう
ただし、維持量はミダゾラムと全く異なりますのでご注意ください
ここまでみてきたところによると、
ミダゾラムと同様に導入薬として使用し、
血中濃度を大きく間違わずに維持量を投与すれば、
手術終了直前に持続投与中止で、
呼吸抑制を延長させることなく抜管できる薬剤と言えるでしょう
そして、抜管後に認知機能の回復が不完全で不穏がみられた場合には、
迷わずフルマゼニル投与、でどうでしょうか
麻酔はこんな単純なものではないというのはご承知のとおりですが、イメージトレーニングも大事です
おまけ
今回はベンゾジアゼピン系薬剤として、麻酔科がよく使う2種を取り上げました
しかしその他にもベンゾジアゼピン系薬剤はあります
そこで、集中治療分野で使うジアゼパム、フルニトラゼパムを含めた4種で比較してみました
これをみると、ミダゾラムの『短時間作用性』ということに納得できるかと思います
今回の参考資料はこちら↓↓
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