【糖尿病】麻酔科に大事な内科疾患 -1-

麻酔

麻酔科にとって切っても切り離せない内科疾患3つ

糖尿病、高血圧、気管支喘息

どれも周術期管理をしっかりやらなければ、場合によっては患者の予後を変えてしまいかねません

今回はその第1弾として

糖尿病についてみていきましょう

そもそも糖尿病患者は周術期に何が問題になるのでしょうか

「パッと思いつくものは、感染しやすくなるから・・・もごもご

このように、まだ皆さんの中にははっきりと言えない人もいるのではないでしょうか

こちらはイギリスの糖尿病学会が発表している「周術期の血糖管理に関するガイドライン」です

NHS Diabetes guideline for the perioperative management of the adult patient with diabetes

多くの手術で糖尿病が術後の予後を悪くするとい内容が記されています

この結果はどのような原因からくるのでしょう

上記が麻酔科医として術前の評価項目であり、かつ術後の予後に関係してくる項目でもあると思います

この表からもわかるように、麻酔科医は糖尿病そのものというよりは合併症である腎障害や自律神経障害等の対処が問題となるのです

それでは、1つずつみていきましょう

糖尿病合併症

腎機能障害

まずは腎機能障害についてです

診断には尿中アルブミン、機能評価にはeGFRが使われます

いずれの異常値も心血管系疾患のリスクファクターと言われています

腎機能障害がある患者の術中管理のポイントについては、

『血圧と循環血液量の維持に努める』

これに尽きると思います

血圧のコントールにより腎臓の灌流圧を保ちます

具体的に血圧をどのくらいに維持するのか、これは患者の普段の血圧を参考に決めましょう

循環血液量を保つことも決して容易ではありません

参考としては尿量を0.5 ml/kg/hrをキープすることですが、残念ながら十分なエビデンスがあるわけではありません

神経障害

続いて神経障害についてです

3大合併症のなかでもっとも症状が早く出てくると言われています

血糖管理不良の他、高血圧症や喫煙者で起こりやすいとされています

神経障害がある場合は区域麻酔を施行する場合に要注意です

そもそもの感覚異常が、我々の手技にによる神経障害がマスクされてしまう可能性があるからです

それ以外にも、神経ブロックをする際に神経刺激装置を用いた場合、反応が乏しく確実なブロックが難しくなることも考えられます

対処法としては、他の鎮痛方法へ変更するしかないでしょう

運動障害まで出現している患者は深部静脈血栓症の有無を確認する必要があるでしょう

詳細はここでは省きますが、更なる合併症をつくらないためにも疑うことが大事だと思います

自律神経障害

最後は自律神経障害についてです

皆さんの中で、明らかに血管内脱水が起きているはずなのに脈が50 回/min、

なんて患者に出くわしたことはありませんか

もしかしたらその人は糖尿病患者で、既に自律神経障害が出ていた患者だったかもしれません

また糖尿病患者が緊急手術となり、十分な検査ができない場合に

おそらく心機能が低下しているだろう、とか

最終食事から時間は経っているが胃内容物はパンパンだろうな

などと推測することはとても大事です

糖尿病を甘くみてはいけません

ここまで糖尿病合併症のお話をしてきました

もう1つ糖尿病患者の周術期管理で重要なことがあります

それは、周術期の血糖値です

周術期血糖管理

術中の高血糖自体も術後予後に関わるというのです

それでは実際にどの程度の血糖値を目標にすればいいのでしょうか

糖尿病の診断基準の1つに空腹時血糖が126 mg/dL以上、という項目があります

周術期も同じように126 mg/dL未満にするよう治療する必要があるのでしょうか

答えとしては「必要はありません、むしろこのように治療してはいけません」

2000年頃までは強化インスリン療法は周術期も推奨されていました

しかしその後、高血糖と同等もしくはそれ以上に低血糖が予後を悪くする

ということが明らかになっています

そして現在、術中の血糖目標値がしっかりと定められたわけではありませんが、

周術期では目標値、144 – 188 mg/dLが推奨されています

ざっくりと150 mg/dLくらいです

個人的には低血糖を避けるべく、200 mg/dLを目標にインスリン投与を行うようにしています

では実際に術中はどのようにインスリンを投与していくのでしょうか

術中の大きな血糖変動には、基本的に速効型インスリンであるヒューマリン®︎R注を静注で使用します

しかし添付文書には皮下注射投与に関する項目しかなく、静注方法については記載がありません

『Lexicomp』という医薬品情報リソースによると以下のように示されています

静注は効果発現が速く、持続時間が短いのが特徴です

このインスリン静注投与で注意点が2つあります

1つは必ずメイン輸液に5%相当以上のブドウ糖が入っている必要がある、ということです

静注は低血糖を起こしやすいため、糖入り輸液が必須になるのです

もう1つはインスリンはライン内に一部付着する、ということです

インスリンのソフトバック輸液容器への吸着とその防止の試み

これは輸液内に吸着するという論文で容器の種類によって違いはありますが、5-20 %の吸着率と述べられております

インスリン量が少ないほど吸着率が上がることを覚えておきましょう

まとめると、

血糖250 mg/dL

輸液の変更を考慮

インスリン2-4単位を生食に薄めて静注

静注後15-30分で血糖測定する

ざっくりではありますが、試してみてください

おまけ

『術前診察』のなかで取り上げましたが、

糖尿病の治療薬は新薬も増え、専門家ではないと覚えることも大変になってきました

糖尿病の薬は手術当日から中止するのが基本であり、当たり前でした

しかし、ビグアナイド薬やSGLT2阻害薬を服用中に乳酸アシドーシス、ケトアシドーシスをきたす患者が報告されるようになりました

周術期におけるストレスや絶食により惹起される可能性もあり、手術前にも早期中止するよう提言されています

もちろんこれを待てない手術であれば、手術を優先すべきです

その上でアシドーシスを起こすかもしれない、と構えて臨みましょう

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