【気道管理】気道評価と換気困難への対処法

麻酔

皆さん、換気ができず“ヒヤッ”とした経験はもうお済みですか

本当に怖いですよね

冷や汗がドバーッと出てくるのがよくわかります

気道管理は麻酔科医となった以上、今後も毎日のように行うものです

それだけに麻酔科医にとって最も大事なお仕事と言っても過言ではありません

今回はこの気道管理についてお話ししていきたいと思います

気道評価

まずは気道評価についてお話しします

気道評価は『術前診察』で麻酔プランをたてるために必要なポイントの1つです

皆さんは術前どのように評価をしていますか

日本麻酔科学会では2014年に評価すべき点について次の項目を挙げています

術前診察ということで言えば、

マランパチ、頚部触診、歯の評価、睡眠時無呼吸の評価、頚部可動域

というところでしょうか

個人的な意見として、特におすすめは「甲状切痕-頤間距離」の評価です

患者への負担が最小限であり、簡便に行えるからです

頚部可動域評価の際に同時に行えて、第2・3・4指を当てるだけで評価できます

距離が3本指以下におさまっていれば良い、という評価法です

個人的意見はいいからエビデンスレベルが高いものを教えて、ということであればこちらです

Will This Patient Be Difficult to Intubate?The Rational Clinical Examination Systematic Review

2019年のメタ分析による結果です

実は麻酔科学会が提示していない評価項目が最も挿管困難と相関関係がある、と結論づけています

その評価項目は「upper lip bite test」です

挿管困難を3段階に評価します

クラスⅢであれば陽性尤度比 14

クラスⅢであれば挿管困難患者である可能性は14倍に跳ね上がります

この論文ではマランパチの評価以上に有用性があるとのことです

試してみる価値はありそうですね

換気困難

続いて換気困難についてお話しします

研修医向けの本『気道管理に強くなる』からの抜粋ですが、マスク換気困難危険因子は以下のものが挙げられます

マスク換気困難因子

マスク換気手技の経験数が少ないうちは、ちょっとしたマスクフィット不良でもパニックになってしまいますよね

パニックにならないためにも術前診察で危険因子をピックアップしておき、1つでも当てはまるものがあれば代替案を1、2パターン用意しておけば安心でしょう

私の苦い経験は「頚部可動域制限」患者のマスク換気困難です

頚椎固定術後患者で頚部後屈が全くできない方でした

あわてて挿管したことを今でもはっきり覚えています

あわてての挿管は一応「気道管理アルゴリズム」に則ってやったつもりです・・

術前で頚部可動域のチェックをしていなかったことが、パニックの原因であり反省点です

導入前酸素

ではそのマスク換気法についてお話ししていきますが、その前に導入前酸素の重要性についてお話ししておきます

Critical Hemoglobin Desaturation Will Occur before Return to an Unparalyzed State following 1 mg/kg Intravenous Succinylcholine

70kgの成人が導入前に5分間100%酸素を投与されると、

換気なしでSpO2 90%まで低下するのに8分かかります

8分ですよ! 挿管手技に十分すぎるほど時間をかけられます

全くパニックになる必要なんてありません

安心しましたか

でも残念ながら全てが対象ではありません

お気づきの方もいるかもしれませんが、体重が約倍の127kgの成人では同様の条件でSpO2 90%まで2分半しかもちません

しかもグラフの傾きがとんでもなく急ですよね

ちょっとSpO2が下がってきたと思ったらそこから一気に落ちます

恐ろしいですね

それでも導入前酸素があるとないでは大違いです

しっかりと行いましょう

マスク換気法

それでは実際のマスク換気法について説明していきます

マスク換気のキモは上気道閉塞の解除です

よく上気道閉塞のことを舌根沈下と言いますが、厳密に言うと違います

上気道閉塞を起こす箇所はたくさんあります

その1つが舌根である、ということです

この数ある閉塞箇所を全て解除する手法が、皆さんが良く耳にする「頚部後屈」「下顎挙上」なのです

これを極めることが麻酔科医を極めることにもつながります

ただどうしても難しい場合はあります

そんなときはプライドは捨てて便利な器具を使いましょう

経鼻エアウェイや声門上器具の出番です

使用法については省きますが、デバイスによって物理的に上気道閉塞を解除するのです

ここまでして上気道閉塞を防ぐ理由としては、上気道閉塞がもたらす悪循環はえげつないものがあるからです

呼吸のみならず、意識、循環をも狂わせてしまうのです

何気ない1つの手術が、その後とんでもない人生へと変貌してしまう可能性もあるのです

なんか急に恐ろしい話をしてしまいましたが、

それだけ気道管理は麻酔科医にとって大事だということが言いたいのです

冒頭で言った通りなんですよね

おまけ

マスク換気困難時に私が良くやっている手法をご紹介します

前置きさせていただきますが、エビデンスレベルは高くありません

Optimizing Mask Ventilation: Literature Review and Development of a Conceptual Framework

マスクを口には当てず、鼻にのみ当てて換気する方法です

詳細は論文を読んでいただければと思いますが、意外と良いです

上気道閉塞概ね解除できます

ぜひお試しを

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